消火器の使い方と管理の術を知り火災が起こりにくい環境を作ろう!


燃えやすい雑誌や木材などから黙々と煙が立ち昇り、くすぶっていた煙からひょっこりと小さな火が現れる。

小さな火は、時間の経過と共に大きな炎となり、やがて消化不能な大火災へと発展し、家や建物の中にある財産を一瞬にして灰にさせる恐ろしさがある。

そんな大火災を食い止めるには、小さな火の段階から速やかに消火することが大切だ!

そこで、初期消化に役立つ道具で有名な消火器の使い方や消火器を管理する方法について紹介しよう。







消火器の使い方は思いっきりレバーを握り放射する!

消火器の使い方は、とても簡単で、以下の使い方のとおりにやれば、ホースからスムーズに炎を鎮火させる消火剤が放射される。

【消火器の使い方の手順】
  1. 安全ピン(黄色)を抜く。
  2. ホースを取り外してホースを火元に向ける。
  3. 黒いレバーを握り火元に向かって放射する。

たったこれだけで消火器のホースから炎を消すための消火剤が出るので、手順をしっかりと覚えておくといい。

また、消火器を「どの状況で使えば効果的に消火できるか?」についても考えないといけないので、次の初期消火の項目をみておくといいだろう。

消火器は初期消化の段階でしか使えない!

消火器が、効果を発揮するには、火が出火して間もない状況や出火しても炎が周囲に広がっていない状況でしか発揮することができない。

つまり、周囲に火が燃え広がっていたり、炎が大きかったりすれば、消火器で鎮火することが困難になるのだ。

また、消火器で消せる状況は、以下の火災時でしか使用できないので、しっかりと確認しておこう。

【消火器が使える火災の種類】
  • 普通火災。
  • 油火災。
  • 電気火災。
  • 木材や紙、繊維などの火災。
  • 灯油やガソリンなどの油類の火災。
  • 配電盤やコンセントなどの火災。

逆に、消火器を使ってはいけない火災もあるので、一緒に確認しておこう。

【消火器が使えない火災の種類】
  • 金属火災。(マグネシウムやアルミニウム。)

特に、金属火災は、水や通常の消火器を使って鎮火させようとすると、逆に火災が大きくなったり、大爆発を起こしたりするので、絶対に水や通常の消火器で火を消さないことだ。

もし、火を消すのなら、金属火災専用の消火器や乾燥している砂で覆って消化する以外の方法しかないので、もしもの時のために覚えておくといいだろう。

消火器の設置は歩行距離で約20m以内!

消火器の設置場所は、建物の中でどの場所にいても消火器までの歩行距離で約20m以内にたどり着けることが求められている。

そのため、建物の大きさや利用目的次第では、消火器の置き場所が異なることになる。

けれど、おおよそ以下の置き場所に設置されることが多い。

【消火器の設置場所】
  • 各部屋の四隅。
  • 屋外。

などの通行や避難の邪魔にならない場所に設置され、消火能力単位に見合った消火器や消火器の数が、それぞれの場所に配置されることになる。

もちろん、水で濡れやすい屋外のような場所に消火器を設置しなければならない場合は、以下の方法で対策する必要もある。

【水で濡れないための対策】
  • 消火器格納箱。
  • 消火器設置台。

こうして、消火器の底が水で腐食しないように保管したり、床よりも高い場所に消火器を設置していくのだ。

また、消火器を設置するなら、消防署へ「消防用設備等設置届出書」という書類を提出しなければいけないので、忘れないようにやっておこう。

【注意】

一般家庭は、消火器の設置義務や点検義務はありません。

消火器の設置義務があれば6ヶ月に1回は点検が必要!

消火器の設置義務があると、消防法第17条の3の3に規定された法律から消防用設備は、維持・点検する義務が生じ、必ず消火器の点検をしなければいけない。

また、消火器による点検は、有資格者による点検でなければならない。

そして、6ヶ月に1回で点検する消火器の検査項目は、以下のとおりだ。

【6ヶ月に1回で点検する項目】
設置状況
  • 消火器の数や設置場所。
外観点検
  • サビの有無。
  • 安全栓の抜けや破損。
  • 安全栓の封の有無。
  • ホースの劣化。
  • 畜圧式の消火器は指示圧力計の針の位置。
機能点検
  • 消火器の中をチェックするためキャップを開く。

などの点検項目があり、結果を点検結果報告書に記録し保存していく必要がある。

記録したデータは、消防署へ3年に1度に報告する義務があるため、消防法に基づいた法定点検をしっかりと行わなければならない。

そのため、以下の資料もあるので、参考程度に確認しておくといいだろう。

【参考資料】

内部点検は消火器を実際に放射する!

消火器は、ある年数を超えれば、消火器の内部を点検しなければならない。

目的は、消火器の中に入っている消火剤が、「火災時に期待通りの効果を発揮できるか?」という観点から行われる。

そして、消火器の内部点検の内容としては、以下のとおりだ。

【内部点検の内容】
  • 実際に使用して放射できるか?
  • 消火薬剤量が規定値以上出ているか?
  • 消火器の内部にサビなどが発生していないか?

といった感じで内部点検が行われる。

このとき、消火器の年数が、製造年からある年数を経過したものから抜き取っていき、実際に放射することになる。

内部点検は消火器の種類によって変わる!

消火器の種類によっては、抜き取る消火器の年数が変わるので、以下のとおり確認しておこう。

【消火器の種類と抜き取り年数の違い】
種類型式抜き取り年数
粉末消火器
  • 加圧式。
  • 製造年3~8年目まで。
強化液タイプ消火器
  • 蓄圧式。
  • 製造年5~10年目まで。

といった消火器があり、製造年から年数を超えた消火器から本数が均等になるように抜き取っていき、抜き取った消火器の半分以上を放射し、残りは機能試験をしていく。

こうして無事に内部点検が終わり、以下の部品などに問題があれば、合わせて交換していくことになる。

【内部点検終了後の部品交換】
  • 消火薬剤の詰め替え。
  • 使用済みの表示装置。
  • 防湿盤。
  • ガスボンベ。(加圧式。)

もちろん、これらの内部点検や部品交換などは、有資格者でなければいけないので、覚えておこう。

消火器は10年経過すれば耐圧試験をする!

消火器は、製造年から10年を経過していれば、耐圧性能の点検をしなければならない。

もっと分かりやすく言えば、「製造年+11年」の年に消火器の耐圧試験をするということだ。

耐圧試験は、消火器の筒の中を空っぽにし、水を入れて水圧を加えた状態で、消火器に漏れや破裂などがないかを確認し検査をする。

具体的な耐圧方法から終了までの簡単な流れは以下のとおりだ。

【消火器の耐圧から終了までの簡単な流れ】
  1. 消火器の薬剤や部品類の抜き取りと保管。
  2. 耐圧試験機で判定し5分間漏れや変形や破裂がないか行われる。(安全な環境化。)
  3. 無事に終われば、消火器を完全に乾燥させる。
  4. 保管しておいた消火器の薬剤や部品などを復元。
  5. 元の場所に消火器を戻す。

といった流れで耐圧試験が行われ、これを3年ごとにしなければならない。

中でも、粉末消火器は、耐圧試験を合格しても様々な問題が立ちはだかりとても厄介だ。

むしろ、以下のデメリットしかないのが問題なのだ。

【粉末消火器を耐圧試験するデメリット】
  • 水圧で消火器の腐食を誘発しやすくなる。
  • 消火薬剤が湿気で固くなる。
  • 消火薬剤の交換や耐圧試験などで費用がかさむ。

これらのデメリットから言えることは、耐圧試験をするくらいなら、「新品の消火器に早く交換した方がマシ!」と言っていいほど耐圧試験をするメリットがないのだ。

だから、耐圧試験をせずに古い消火器は、ささっと処分して、新品の消火器を購入するのがオススメな方法と言える。

消火器は種類が豊富でそれぞれの管理方法も異なる!

消火器は、種類が豊富で小さな消火器から大きな消火器まで実に多種多様だ。

そこで、消火器の違いや役割について一つ一つ確認していこう。

【消火器のそれぞれの違い】
  • 住宅用と業務用の消火器の違い。
  • 消火器の種類やその他の分類。

住宅用と業務用の消火器の違い!

消火器には、住宅用(家庭用)と業務用というカテゴリが存在する。

中でも、住宅用の消火器は、「消火器の設置が義務化されている集合住宅内の家庭。(マンションなど。)」のことを指していて、「一般家庭」のことを指しているわけではないのだという。

それでは、「何のためにこの住宅用というカテゴリが作られたのか?」と言うと、「半年に1回にマンションに住んでいる全ての家庭の消火器を点検することは事実上不可能!」という理由からこの住宅用の消火器が作られたらしいのだ。

もう一方の業務用の消火器は、従来の消火器と何ら変わらない、住宅用の消火器との違いを出すために、作られた名称なのだという。

このことから、住宅用と業務用の消火器には以下のそれぞれの違いがある。

【住宅用と業務用の消火器の違い】
消火器の用途特徴
住宅用
  • 有効年数5年。
  • 消火薬剤の詰め替えが不可能。
  • 更新は本体の買い替え。
  • 分解整備が不可能。
  • 有資格者の点検が不要。
業務用
  • 有効年数10年。
  • 消火薬剤の詰め替え可能。
  • 法定点検や放射試験がある。
  • 本体の耐圧試験がある。
  • 有資格者の点検が必要。

この違いから住宅用の消火器は、有効期限の5年を過ぎれば、自然と新品の消火器と取り換えていくことになるのだ。

消火器の種類やその他の分類

消火器には、その他にも様々な種類や分類が存在するので、以下のとおり一つずつ確認しておこう。

【代表的な消火器の種類】
名称特徴と用途
粉末消火器【特徴】
  • 有効期限10年。
  • 粉末なので湿気で固まりやすい。
  • 放射すれば掃除が大変。
  • 詰め替えができる。
  • ガス圧で爆発する可能性がある。
  • 加圧式。
【用途】
  • 広く燃え広がった消火に有効。
  • 普通火災に有効。
強化液消火器【特徴】
  • 有効期限5年。
  • 詰め替えができない。
  • 浸透性がある。
  • 粉末より値段が高い。
  • 蓄圧式。
【用途】
  • 狭い範囲の消火に有効。(鍋からの炎など。)
  • 調理店や飲食店の業務用フライヤーなどの油火災に有効。

といった代表的な消火器の種類にも大きな違いがある。

この他にも様々なタイプの消火器が分類されている。

【能力単位の数値による分類】
種類能力単位
小型消火器
  • 1単位以上。
大型消火器
  • 充填される消火薬剤の容量が多い。
【持ち運びによる分類】
型式特徴
手さげ式
  • 手に下げている状態で使用。
据え置き式
  • 床や地面の上に置いた状態でノズル部分を持って、ホースの延長で使用。
背負式
  • 背負い紐などで背負って使用。
車載式
  • 運搬のための車輪がある。

こういった複数の種類や分類からそれぞれの建物や場所にとって、最適な消火器を選択することになる。

消火器は劣化が進むと爆発の危険が高まる!

消火器は、設置場所により劣化スピードが早まることがある。

例えば、屋外や潮風が当たりやすい海岸付近や高温多湿な環境に長期間、置かれていたりすれば、あっという間に消火器の腐食と劣化が進んでいくことになる。

もちろん、上記の設置場所以外でも以下の消火器の状態に不具合が見つかったなら、すぐに新品の消火器に交換しなくてはいけない。

【消火器の不具合】
  • 消火器の変形(ヘコミ)やサビ、キズがある。
  • 消火器の底がサビている。
  • 消火器が腐食している。
  • 消火器の耐用年数が過ぎている。

こういった消火器は、破裂していつ爆発してもおかしくない状態なので、すぐに処分しなければならないこともしっかりと覚えておこう。

消火器の処分のタイミングはいつにするべきか?

ここまで消火器で発生する問題や様々な検査について説明してきた。

そこで、最後に気になるのが、「消火器の処分と交換をどのタイミングで行うべきか?」ということだろう。

率直なことを言えば、内部点検を迎える時期に古い消火器を処分してしまい、同時に新品の消火器を購入するのが、最も良いタイミングだ。

通常、消火器の耐用年数は、PL法(製造物責任法)により8年で保証されているが、この年数よりも早く新品の消火器に取り換えてしまう方が費用の面やメンテナンスの面で圧倒的に安くコストを抑えることができる。

そして、古い消火器を処分するなら、以下の場所で処分しておこう。

【消火器を処分してくれる場所】

このような場所で消火器を引き取ってもらうには、必ずリサイクルシールが消火器に張られている必要がある。

もしも、リサイクルシールが張られていないなら、消火器の処分をしてくれないので、消火器を処分してくれる場所で合わせてリサイクルシールの購入も済ませておこう。

消火器の点検は専門業者に任せよう!

消火器の点検は、自力でやろうと思えば、できないわけではないが、以下の多くの問題が立ちはだかる。

【消火器を点検するための問題】
  1. 消防設備士乙6類や第1種や第2種消防設備点検などの有資格者になることができるか?
  2. 消火器専用の点検道具や機器を全てそろえることができるか?
  3. 消火器を点検できるほどの知識や実際に法定どおりの点検できるほどのスキルがあるか?
  4. 消防署へ提出する報告書を作成することができるか?
  5. 点検シール(点検済み票※1)を手に入れることができるか?
  6. 不具合が起こった時にすぐに対処できるか?
  7. 消防署からの指導を受けたときに対応することができるか?

といった消火器を点検するためには、多くの問題を乗り越えなければ、そもそも点検することさえできない。

そのため、法定基準に基づいた消火器の点検するのなら、もう一層のこと専門業者に点検を任せてしまった方が楽なのだ。

【点検シール(点検済み票)※1】
  • 各都道府県の消防設備協会が発行する点検シールで、加入している業者だけが使用でき、加入には一定の要件を満たす必要がある。
  • シールの内容は、点検会社名や点検年月日や次回点検年月日を記載する。

消火器は火災時に使用できることが大切!

火災が発生した時、いざ消火器が使えなければ、ただのガラクタ。

そうならないためにも、消火器の点検や確認は怠らないように、日頃からチェックはしておこう!

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