気象庁は、今年の夏、「冷夏」になると予想していたが、実は、「冷夏」はなく今年の夏も例年通りの「暑さ」がやってくるようだ。
そこで、気象庁が予想していた「冷夏」や「冷夏」と深い関係にある「エルニーニョ現象」について紹介する。
目次
冷夏は過去の気温と比べている!
「冷夏」とは、例年の夏の気温と比べて低い状態のことをいう。
また、気温がどれほど低いかについては、色々な定義があるが、通常、「その年の6月から8月までの平均気温」から判断していて、「約3ケ月の平均気温が、例年の気温と比べて、1度以上低い」と分かったときに「冷夏」と呼んでいる。
冷夏が起こるメカニズム
「冷夏」が起こるメカニズムは、「オホーツク海の高気圧が南下する」ことで起こる。
この南下した高気圧の出現は、「やませ」という冷たい風が吹くようになり、この風により北日本や東日本の太平洋側で冷たい雨が降るようになる。(この時に気温が下がる。)
あと、もう一つメカニズムがあって、太平洋高気圧の張り出しが弱ければ、南下してくる寒気を北へ押し返すことができずに、「冷夏」になることがある。
このような条件になったときに、初めて「冷夏」が起こるようになる。
冷夏が暮らしに与える影響
冷夏は、暮らしに様々な影響を与える。
具体的には、日照不足の影響により農作物の育ちが悪くなったり、野菜の一部しか収穫できなかったり、野菜の値段が高騰したりと「冷夏」による影響を受けてしまう。
また、過去に冷夏により大きな影響を受けた年があった。
それは、1993年の夏で、冷夏により「米不足」を招いてしまい、海外から輸入をしなければならないほど大きな影響を受けたんだ。
つまり、冷夏は、「農作物の不足」や「夏物の商品が売れにくい」などの暮らしに与える影響がとても大きいということを知っておいた方が良いだろう。
エルニーニョ現象が冷夏をもらたす!
エルニーニョ現象になると、日本は、「冷夏」になる傾向にある。
エルニーニョ現象とは、太平洋の海域にある南アメリカのペルー沖の海水の温度が上昇することをいう。
これが、「日本の冷夏とどういった関係があるの?」と思うだろう。
そこで、まず、日本が例年通りの暑い夏になるには、「どういった条件でなるのか?」を先に知る必要がある。
インドネシア・フィリピン海域の海水温度と太平洋高気圧の関係性
日本が暑くなる条件は、「インドネシア・フィリピンの海域の海水温度の上昇」と「太平洋高気圧の強い張り出し」という2つの条件が必要となる。
まず、インドネシア・フィリピンの海域の海水温度による上昇は、上昇気流を起こし、大気の循環によって、日本の南で下降気流を発生させる。
これが、日本全体を熱く覆う強い勢力である「太平洋高気圧」になっていくんだ。
だが、インドネシア・フィリピンの海域の海水温度が低いと、上昇気流が弱くなり、同時に太平洋高気圧の張り出しも弱くなる。
この太平洋高気圧の張り出しの弱さが、日本の夏に「冷夏」をもたらす間接的な理由の一つだ。
つまり、その年に日本の夏が暑くなるためには、「インドネシア・フィリピン海域の海水温度」が高くなければいけないんだ。
太平洋海域の海水温度の関係性
「インドネシア・フィリピンの海域」と「ペルー沖の海域」の海水温度には、とても密接した関係にある。
それは、「インドネシア・フィリピンの海域」と「ペルー沖海域」は、同じ太平洋という海で繋がっており、通常、ペルー沖の海水温度が低くなると、インドネシア・フィリピンの海域の海水温度が高くなるというトレードオフのような相互関係になっている。
だが、エルニーニョ現象による影響を受けていると、ペルー沖の海水温度が高い状態で保たれてしまい、インドネシア・フィリピンの海域に暖かい海水が、いつまでも流れ込まないという現象が起こってしまう。
つまり、強い上昇気流を発生させることができない。
この上昇気流の弱まりで、太平洋高気圧の張り出しも同時に弱くなり、日本で「冷夏」が起こるようになるんだ。
これが、「冷夏」と「エルニーニョ現象」の間接的な関係なので、覚えておこう!
梅雨の長期化
エルニーニョ現象による影響は、冷夏だけでなく、梅雨が長引く原因にもなる。
梅雨の時期は、連続した雲のかたまりである梅雨前線が日本全体を覆い、空からシトシトした雨が降り続ける。
そして、梅雨明けを本格的に迎えるには、梅雨前線を押し上げる太平洋高気圧の張り出しの強さが必要になる。
だが、エルニーニョ現象の影響を受けていると、太平洋高気圧の張り出しが弱くなるので、梅雨前線を押し上げることができず、梅雨の時期が長引いてしまう要因になるわけだ。
この梅雨が長引くことによる影響で、「日照不足」や「気温の低下」を招き、農作物にも悪い影響を与えることになる。
もちろん、晴れている期間も少なく気温も低いので、梅雨の長期化が「冷夏」になる直接的な原因でもあるのだ。
冷夏とエルニーニョ現象はセットで起こる!
冷夏とエルニーニョ現象は、切っても切れない関係であることを少しは理解できただろうか?
特に、冷夏が、暮らしに与える影響が「とても大きい」ということを前もって知っておけば、後々の冷夏になる年になっても慌てなくてもすむので、今のうちにしっかりと覚えておこう!